2019年を振り返って-平成から令和へ-
皆様、いつも大変お世話になっています。 CBA日記を長らく更新せず、申し訳ありません。 日々心身の衰えを感じる年の瀬ではありますが、今年も1年「ずいぶん走り続けてきたなあ」と振り返り、出会った多くの皆様への感謝と、多くの仲間たちへのメッセージも込めて、久しぶりに日記の更新をしたいと思います。
今年は、「CBAの話をしてもらえませんか」と声をかけていただき、話をさせていただく機会が多くありました。リハビリテーションの行く末を語り、CBAの活用について熱い議論を戦わせたことを振り返りたいと思います。
★岐阜県三療法士会(1月14日)
「暮らしに寄り添う、生活期の言語聴覚療法」
講演 年明け早々、岐阜県の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士会合同の講習会で、生活期の言語聴覚療法について、話をする機会をいただきました。前年に「現場が伝える、言語聴覚士の生活期リハビリテーション」という書籍を執筆したためか、「生活期の話をしてください」と言われる機会が増えていた時期でした。
私にとって、生活期の認知コミュニケーションの理解や生活期のPT・OT・ST連携は、大切な取り組みテーマの1つです。この日も若いSTへの応援メッセージを発信させていただくとともに、「生活期で使える認知・コミュニケーションの理解」と題して、CBAの紹介もさせていただきました。
★神奈川県訪問リハビリテーション学術集会(1月20日)
「コミュニケーション障害に焦点を当てた主体的アプローチ」
こちらも、対象者はセラピストを越えた多職種の皆さんでした。神奈川県は、いろいろな形で多職種連携が進んでいる県だと感じます。
訪問リハに関わる多職種の皆さんが、認知コミュニケーションを理解しておくことの重要性を感じ、CBAを知りたいと思ってくださることは、大変ありがたいと感じました。CBAを初めて知った方々との切れ味良いディスカッションも、良い思い出となっています。またどこかで、議論の続きができれば嬉しいです。
★CBA講習会in赤羽(4月20日)
「認知関連行動アセスメントの理解」
CBAの普及を目指す仲間たちと合同で開催している勉強会です。2016年から開始し、初期にはなかなか参加者が集まらず苦労しましたが、少しずつ認知度が上がり、参加してくださる方々が増えてきました。
「CBAを知りたい」と思う方々に、CBAについて学んでもらう講習会ですが、恒例のディスカッションが最も盛り上がり、ここで多くの物を得ていただくことができています。 利用する職種の拡大、回復期、生活期、急性期、と病期の広がりに加え、ご本人やご家族の使用など、利用の拡大の議論が行われました。
★北海道言語聴覚士会(5月19日)
「STのための高次脳機能障害とコミュニケーション-認知関連行動アセスメント(CBA)を用いて-」
ST養成校時代の同級生からのお誘いで、北海道に呼んでいただき、CBAの紹介をさせていただくことができました。昨年はじめて試行的に開始した「会話とCBA」という内容で、ほぼ全員STの対象者に対して、お話をさせていただきました。
CBAの考え方を会話に活かし、会話での評価アプローチこそ、ST臨床の核である、ということを伝え、議論の時間も持ちました。壮大なテーマであり、未だ話は入り口で、極めるには長い道のりになると感じています。しかし、多くのSTと意見交換をすることにより、確実に見えているものが広がっています。その機会をいただけたことが、大変ありがたかったです。
「自分を活かし、患者さまに寄り添うために会話スキルを使用する」という考え方に、多くのSTから共感をいただくことができました。
★三重県言語聴覚士会(6月1日)
「STの役に立つ、ADLの理解-認知関連行動アセスメント(CBA)を用いて-」
若いSTの友人から声をかけていただき、現在の住まいの隣県である三重県に行ってきました。STから「ADLの話を」と言っていただくことは、大変うれしかったです。
STが、活動だけでなく、参加に関われる職種であるために、ICFや運動機能、ADLの理解は必須であると感じています。その知識を持ち、CBAを理解することで、STはリハビリテーションチームの要の位置に立つことができる、と感じています。 津市はなかなかおしゃれな街で、開始を待つ時間に訪れた茶室での語らいも、忘れられない思い出です。お近くですので、これからも行き来できればうれしいです。
★新潟県言語聴覚士会6月9日
「生活期でSTは何ができるのか-STが持つべき視点-」
前職場である輝生会船橋市立リハビリテーション病院の入社同期の懐かしいSTからの声掛けで、新潟県に伺ってきました。この日いただいたテーマは「生活期」でしたが、CBAの紹介もさせていただきました。CBAは回復期生まれ育ったと言えますが、生活期で使うのにとても適していると思っています。この日も、そのように感じてくださった方が多かったと感じます。
生活期に働くSTはまだまだ少数であり、特に地方にいくとSTは病院に集中しています。しかし時代の変化の中で、在宅領域で働くSTへのニーズはどんどん高まっているのです。「個室」というお守りを持たない生活期のSTを取り巻く環境は、決して平たんではありませんが、活躍の場に溢れているともいうことができます。CBAを使いこなすことで、多職種が求める認知コミュニケーションに関わる情報を、発信する手がかりを得ることができます。生活期に足を踏み入れた若いSTに、エールを送ります。
★愛知県言語聴覚士会シンポジウム(6月16日)
「笑顔の授業」
ここで、CBAの話はひと休みです。今年の活動の中で、CBAと並んで私にとって重要であったのが、「笑顔の授業」にまつわるものです。脳梗塞の後遺症で失語症を生じた池田博之さん(東京海上日動)と、彼の上司、同僚や家族、そして私たちSTで作る「笑顔の授業」プロジェクトチームは、今年多くの場所で話をさせていただきました。
この後も、養成校や県士会などから声をかけていただき、池田さんの発病から今日に至る物語と、彼をサポートする専門職である私たちSTの物語をお伝えしています。 この活動は、来年さらに発展していきそうな予感を感じています。皆様と池田さんを通じてお会いできることを楽しみにしています。
★日本言語聴覚学会(大分)(6月28、29日)
教育講演「時代の期待に応える―今現場で求められる言語聴覚士の役割―」
ST学会での教育講演という大きな舞台を、初めていただきました。木村暢夫学会長には深く感謝いたします。「回復期リハビリテーション病棟協会で作成した、ST5か条の話を取り入れてほしい」という嬉しいお題を頂戴し、PT・OT・ST連携と、各病期のSTの課題というテーマに絡めて、CBAと会話の話をさせていただきました。
その後、「ST学会で森田さんの話を聞きました」と声をかけていただくことも多く、ST学会でお話しさせていただくことの大きさを感じております。
セッション「高次脳機能障害の理解」
さらに大きかったのは、CBAを扱った演題6題を集めた口頭発表セッションの座長をお任せいただいたことであったと思います。このセッションは大分学会の最終セッションであったにも関わらず、本会場と隣室のモニター会場が満員となり、盛況であったことは、大変うれしい驚きでした。
6題の発表は興味深く、事例報告、ビッグデータを用いた研究、CBAを用いたチームアプローチの活動報告、と盛りだくさんの内容となり、1時間聞いてくださった方々にとっては、CBAを知る機会としていただけたのではないか、と感じています。
このST学会は、CBAの普及において大きな転機となりました。CBAに感じる手ごたえというものが、これまでと比較にならない重みを持って感じられるようになりました。援助してくださったすべての皆さんに、今も心から感謝しております。
さて、3000字を越える日記となり、だいぶ疲れてきました。
今年の活動は、まだまだ半分。後半について、年内に更新する決意を固め、今日はこの辺で終わります。