高次脳機能障害学会2017、参加記
年末になり、今年最大のイベントである高次脳機能障害学会が終わり、今日は疲労困憊です。
今年の大会会場は埼玉県大宮。日本言語聴覚士協会副会長の立石雅子先生が学会長で、全体にST色の濃い高次脳機能障害学会であったように思います。大会テーマは「わかり合うを科学する」。高次脳機能障害の領域も多岐に広がる今日ですが、失語症、読み書き障害、共感、といった企画が並び、STにとって親しみのある大会でした。来年は種村留美先生が大会長、OT色の強い学会になっていいのではないかな、と思います。医師の大会長が多い本学会ですので、OTやSTが学会長の時は、その職種に光が当たることも大切な気がします。
さて、高次脳機能障害学会始まって以来という、「多職種連携」がテーマのシンポジウムが企画され、STのシンポジストに選んでいただきました。企画としては、5人の講師の話した内容がそれぞれに異なっていて、全体の統一性やメッセージ性はわかりにくいところもあったと感じますが、初めての企画としての面白みはあった、という評価はいただけたようです。
私は、CBAを中核に置いた話をさせていただきました。
内容は3つ。1つ目は、多職種連携でより重要なのは、個別症状よりも全般症状であること。高次脳機能障害学会で口にするにはずいぶん勇気が要りましたが、一番譲れない点でした。
2つ目はCBAの紹介。利点として、①高次脳機能障害を専門としない職種を、議論に招き入れることができること、②リハの難易度を検討するときに視点が明確になること、そして③リーズナブルな認知機能の数値データの提供ができること。初めて聞く人にはわかりにくかったかもしれませんが、コンパクトに要点を話しました。
最後が今回もっとも悩んだ「会話を用いた高次脳機能障害へのアプローチ」について。完全にSTをターゲットにした話になってしまいました。私が行ってきた「高次脳機能障害者に対するリハビリテーション」を、もう少し人に語れる形にできないか、と考えるようになり、その一部を形にして話しました。
直後に、座長の三村先生から「大変わかりやすい話だった」とおっしゃっていただいたので、まずは一安心。本当の評価はまだわかりませんが、夜になって近しいSTたちから、次々と「感動した」「涙が出た」というメールをいただき、同志たちに思いが伝わったことを感じました。今回のシンポジストに最終的に込めた思いは、STが高次脳機能障害のリハビリテーションにおいて、もっと良い役割を果たし、良い仕事ができるようになって欲しい、という一点になっていたと感じます。
そして改めて感じたのは、私が目指している道は、「果てしなく遠い」ということ。ゴールに行きつける気がせず、考えると気が遠くなるので、あまり考えずに進むことにします。今回さわりをお話しした「会話による高次脳機能障害のリハビリテーション」を少しでも体系化することは、残りの人生の1つの大きな課題となるでしょう。
株式会社gene主催の講習会、「言語聴覚士のための高次脳機能障害に対する評価とアプローチの考え方~CBA(認知関連行動アセスメント)を活用した評価の実際~名古屋会場~」(2018年3月24日(土)開催)で、今回の続きをお話しするつもりです。興味がある方は、参加してください。
ところで本学会は、書籍「動画と音声で学ぶ、失語症のアプローチ」の発売日でもありました。高次脳機能障害学会での発売に間に合わせるために、ここ数カ月は怒涛の日々でしたが、その甲斐あって、書籍コーナーの一番目に入りやすい場所に置いていただき、売れ行きも上々でした。「字が大きく、絵が多く、カラフルで、わかりやすい、失語症の解説書、音声付き」というのが売りです。若いSTの心に届いた手ごたえがあり、嬉しいです。
(もう誤植が見つかって、がっかり...です。p75のSLTA復唱は、SLTA呼称の誤り。謹んで修正します。)
夜は「出版お祝い会」になりました。共同執筆者の春原則子さんは、学会事務局長という大任を終えたばかりでかけつけてくれました。苦労しましたが、完成にこぎつけた喜びも大きい。出版を期に、来年は全国の若いSTに聞いてもらうために、各地で講習会を開催する予定。新しい出会いを楽しみにしています。
(すぐ下:発表の様子、その下:他のシンポジストとご一緒に、一番下:出版お祝い会にて)