日本言語聴覚士協会 地域言語聴覚療法講習会 訪問・通所ST勉強会にて
そろそろ、在宅のことを語らなければならない!(笑)
地域の時代というが、地域リハはやはり難しい。しかし、ずいぶん力強い人材が育ってきているようにも感じる今日この頃だ。先日行われた日本言語聴覚士協会主催在宅実務者講習会、「通所・訪問における言語聴覚療法」講習会に出向いた際、30代40代の経験豊かなSTの参加比率が増えていること、開業しているSTが少なからずいること、男性STが意外に多いこと、グループディスカッションで積極的でたくましい意見も出ること、などの様子を目の当たりにして、在宅の場でSTが「育っている」のを感じた。
講師陣もパワーアップしている。黒羽真美介護保険部長(介護老人保健施設マロニエ苑)の「制度論」は、理事2期目に入った彼女の知識と弁舌力アップに驚かされる。山本徹氏(永生会リハビリ統括管理部)の「嚥下・栄養へのアプローチ」は、いつもながらの彼の懐深い人間論的嚥下リハに胸が熱くなる。市川勝氏(さがみリハビリテーション病院)「リスクマネジメント」では、はじめて市川さんの話を聞く機会となったが、パワー爆裂でありながら柔軟でしなやかな思考に「これでSTのトークか」と思い、舌を巻いた。宮田睦氏(昭島相互病院通所リハ室)の「グループワーク」では、実践的事例を提示していただいたあと、講師陣が演じるロールプレイに参加者を巻き込んで、リハビリテーション会議への理解を進める。講師陣一丸となった構成力と演技力に脱帽した。
今回、あらためて自分に対して気がついたことがある。これまで、回復期のステージで働いた経験が最も長く、自分を「回復期ST」と自認しているが、昔は入院期間が長期間であったため患者さまに長く関わらせていただく機会が多く、患者会を通じて在宅の患者さまと関わったこと、ちょくちょく訪問STに同行していたこと、などから「生活期ST」も自認している。この2つの自分に矛盾はないと思っていたが、この2つは微妙に隔たっていて、自分の中に別々に存在していることに気がつき、驚かされた。
今年度の診療報酬改定で、FIM実績指数と目標設定等支援管理料が設定され、経過措置期間が過ぎ、回復期は今準備でおおわらわである。この話を、回復期スタッフに話すときと、今回在宅STに話した時に、重きを置くところやスタンスが異なっていた。当然のことかもしれないが、違和感があったのだ。国に金がなく、医療から介護への流れをスムーズにしようという改定だ。そのことを病院セラピストも在宅セラピストも同様に理解し、対処しながらも生き残らなくてはいけない。それなのに何となく、「自分のために」そのことを理解しようというスタンスになってしまうが、そんなことを言っている場合ではないのだ。
改めて思うが、医療セラピストと在宅セラピストの距離は遠い。はっきり言うが、しばしば仲が良くない。様々な努力でずいぶん改善してきているが、解決はしていない。自分の領域を大切にし、こだわることは悪いことではない。しかしこのご時世視野を広く持ち、医療と在宅の隔たりを埋めなくてはどうしようもない。それができないのであれば、セラピストに成せるものはとても小さい。両方の領域に信頼されるセラピスト、両方の領域の話ができるセラピスト、医療と在宅をつなぐ懸け橋になる力を持ったセラピストよ、今こそ出でよ。
さて、話は変わるが在宅でCBAを使用してくださる人たちが増えている。非常に嬉しいとともに、不安もある。これまでの経験から、在宅PTにCBAに話をすると、「飛びつく」か「拒否反応が出る」か、どちらかである。在宅での今後の普及のためには、一層の戦略とたゆまない努力が必要になりそうである。
復職支援を行うOTの方から、以下の話をうかがった。「ある頭部外傷の若者に復職支援を行うことになったが、受傷1年目は、復職はまだ早いと感じていた。2年目、今だと感じ支援を開始しうまく進んだ。時期の判断について、「直観」だけではいけないと感じていたが、CBAを知り評価したところ、1年目は18点、2年目は24点であった。CBAを用いることで、この方の認知機能の重症度をとらえることができ、復職する支援の適切な時期決定に認知機能の回復が関与すると考えることができた」という内容である。
この話は、在宅でCBAを使う意義を極めて明確に示している。長期的に関わる場合、大雑把な評価が重要になる。この点にCBAは優れている。逆に、「最近笑顔が増えた」「細かいことを覚えているようになった」などの、小さいが確実な改善を拾うことができる。この点もCBAの強みである。うまく利用すれば、強い武器になってくれる。目指す先の道は遠いが、引き続き頑張ろうと思う。