PT・OT・ST 5か条につぶやく
回復期リハ病棟協会POS委員会の今年の大きな目標の1つに、各セラピスト5か条の作成がある。すでに完成しているセラピスト10か条の下に(上に?)、PT・OT・ST各5か条を作る試みだ。昨年度に仮案を作成し、今年度のPOS研修にて周知、議論を行っている。POS委員会のST 委員である私はST5か条作成に関わっているが、これはなかなか険しい道のりだった(いや、まだ過去形ではない)。どうして険しかったのかを振り返ると、まず自職種の専門性を改めて明確にして合意を形成する作業は、実に大変だった。領域を定めること、特徴を明確にすること、取捨選択してわかりやすく並べること…。同職種であっても、やっていることや考え方が全く同じではない。その状況を踏まえて、議論を繰り返し、各職種のスタンダードを導き出すのは、予想以上に困難だった。そしてようやく各5か条を示せば、そこに待っているのは、「3職種に統一性がない」というご意見である。納得できる完成形を世に出すにはもう少し時間がかかりそうだが、今年度の3回の研修を終え、何とか先が見えてきたような気がしている。
先日九州博多で行われた第3回POS研修は、5月の東京、6月の大阪と会を重ね、参加者や一般の方からweb上で意見をもらい、それらをもとにPT・OT・ST各委員で議論を重ねてきたので、論点は絞られ、問題点も明確になってきた。
ここからは、全く個人的な私のつぶやきであるので、了解の上読んでいただきたい。
最初にPT委員から提案されたPT5か条は、一般の方から「回復期のPTらしくない!」という意見が噴出したが、実は私自身もそう思っていた。私の中に「私が思う回復期PTのイメージ」が強くあったせいだと思うが、「えーっ?!これが回復期PT?」と感じてしまった。項目建ては素晴らしく、PTがわかりやすく説明されているが、何となく無機質な感じ(感性的な感想で申し訳ありません…)だ。
博多の第3回研修会では、過去2回の研修会の意見をもとにPT委員が合宿をして議論した成果が盛り込まれ、大変共感できる内容になっていた。5か条自体の文言は同じなのだが、解説文が素晴らしかった。たとえば、「歩行」に関わる場合に、生活の中での歩行の意味を考え、その方の体力やニーズを踏まえて関わっていく姿勢が盛り込まれた。また、PTが「認知機能」を含めて理解しておく必要性について解説が加わり、感激してしまった。「こういうPTならついていってもいい!」と思わずつぶやいてしまった。
ST5か条は、大きな修正なく解説を明確にした。ここに至るまで、3人の委員で悩みに悩み、苦しみながら議論を積み上げてきたが、ようやくすっきりとまとまった感じだ。STが関わる専門領域は「コミュニケーション」「摂食嚥下」「高次脳機能障害」であり、「食事」「コミュニケーション」という2つのADLに関わる。ミクロには、失語症、構音障害、嚥下障害などの機能障害に専門的にアプローチすることができ、マクロにはその方が「生きていてよかった」と思える人生の質に関わる専門職である、と明確に思うことができた。
議論を開始した当初は、「高次脳機能障害」の扱いに悩んだ。高次脳機能障害に十分関われていないSTも多いことを感じている。どの程度強気に(?)STの領域だと言っていいのか、不安があった。ところがwebでいただく意見のほとんどが、「STがしっかりと高次脳機能障害に関わると明記すべき」という内容であった。これにはほんとうにはげまされた。ST5か条作成の作業は、私自身が自分の中にあるSTの原点に戻り、もう一度明確に「自分の仕事」を認識するための作業だった。
OTをめぐっては、少し議論が残っているようだ。「生活」に関わる専門職であることは明確であるが、「上肢機能」「作業」などの文言をめぐっては、幅広い意見があり、合意形成には難しさがある。OTは領域が広く、多様なOTがいる。ほんとうに素晴らしい職種だと思うが、専門性を明確に示すことが難しい専門職なのだろう。可能な範囲での議論を尽くして、5か条の完成にこぎつけてほしい。
PT・OT・STがそろって、協力し合ってこの作業を行うことには、大変大きな意味がある。各施設で、PT・OT・STの連携を考えながら日々努力しているセラピストを応援することができる「セラピスト各5か条」の完成に向けて、もう一息かな。