牧迫飛雄馬氏、鵜飼リハビリテーション病院で講演
牧迫飛雄馬氏の名は、理学療法士であれば聞いたことのある人も多いと思う。30代でありながら、多数の英文和文の論文を発表し、著書多数、そして昨年の日本理学療法学術大会最優秀賞をはじめとする、多数の受賞歴がある。今、油の乗り切ったリハビリテーション研究者だ。そのため、当然ながら精力的に活動され、多忙を極めているというのに、つい気軽にいろいろ頼みごとをしてしまう。「申し訳ない」と思うのは後の祭りで、いつもみんなの顰蹙を買う。
彼は、私が6年務めた国際医療福祉大学理学療法学科3期卒業生で、卒後すぐに同学修士課程に進学された。私が就職した年に修士課程を卒業し入れ違いで東京の職場へ移られたため、同じ職場で働いたことはないが、共通の友人も多く、いつの間にか親しくさせていただいている。このたびも、鵜飼リハビリテーション病院で「身近な気づきを研究につなげる」というテーマで講演をお願いしたところ、快くお引き受けいただいた。彼は、このテーマでの講演が得意である。また研究者としての彼の真骨頂も、そこにあると感じている。
研究とは、研究所や大学の中にあるのではなく、日々患者さんと向き合う臨床現場の中になくてはならない。現場にいる私たちは、日々の臨床の中のふとした疑問、気づき、こうじゃないかという思いを、手続きに沿って形にし、証明していく、それが研究だ。牧迫さんは、そういうメッセージを発信してくれる。自分の力だけでは、疑問や気づきを研究のレベルに昇華させることができず、もがいている現場の臨床家のために、どうしたら研究になるか、というすべを垣間見せてくれる。失ってはならないスタンスを示してくれる。そして、一歩階段を上るために、時に手を差し伸べて導いてくれる。
今回も、そうした示唆にあふれる講演会となった。途中、英語論文の読み方に比重が置かれ、ついてこられなくなったスタッフも若干いたが、何とか歯を食いしばってついてきたスタッフにとっては、その先に示された魅力的な科学の世界に、胸がときめく勉強会であった。日々現場の出来事に埋没して生きている私は、スタッフのレベルアップ、スキルアップ、キャリアアップのために、もっと高い意識を持って取り組まなければいけないと、改めて気を引き締める機会となった。
牧迫さんは、実はCBAの生みの親である。2014年にCBA論文を総合リハビリテーション紙に投稿した際、さまざまな助言や指導をくださり、特に統計処理について、全面的にご指導をくださった共同執筆者である。彼は覚えていないというが、当時「行動評価を論文にすることは大変難しく、無理かもしれない」と、投稿を諦めかけていた私に、「必要なものは、データ数と、この研究が必要だと信じるパッションである」とアドバイスをくれた。この言葉が私に勇気を与え、その後自分の信じた道を貫き、輝生会で500例のデータを集め、その後半年あまりで一挙に論文を仕上げるための原動力となった。いくら感謝してもし切れない。 これから先の更なる活躍を願い、応援していきたい。
集合写真は、講演会終了後。今回CBA書籍を執筆した鵜飼リハビリテーション病院の理学療法士菱川法和さん、作業療法士福尾好英さん、言語聴覚士伊藤梓さんと一緒に。牧迫さんから力をもらって、鵜飼リハビリテーション病院から、現場のセラピストを納得させる臨床研究の花が開くことを夢見て、また今日も頑張ろうと思う。