日本訪問リハビリテーション協会学術大会に参加してきました
週末は、東京都船堀で開催された訪問リハ研の学術大会に参加してきました。当法人大門訪問看護ステーションの作業療法士、言語聴覚士と一緒の参加です。宮田昌司大会長は親友で、前職場の輝生会のメンバーがスタッフとして多数参加していたので、久しぶりの再会を喜び合いました。思えば、CBAを標準化するにあたり、輝生会の初台リハビリテーション病院、船橋市立リハビリテーション病院、在宅総合ケアセンター元浅草、在宅総合ケアセンター成城の4つの施設合わせて、約500名のデータを収集することができました。たくさんのスタッフと勉強会を重ね、データ収集に取り組んでもらった日々を思い出し、改めて感謝が込み上げた時間でした。
訪問のPTリーダーが、「時々、CBAがどうしても必要だと感じるんですよ。やっぱり、運動とADLで患者さんの状態が決まってくるので、そこを見れるものがほかにないですからね」と話してくれました。とてもうれしい言葉です。自分が患者をみていくときにある程度の類別化を行うことは、臨床力、予後予測力などを向上させるために重要です。すべての患者に用いることができる評価を用いることで、自分の中の患者を見る視点をより強固なものにすることができます。そこにCBAを役立てていってほしい、そして患者を総合的にとらえられるより強い訪問のリーダーになってもらいたい、と思いました。
今回私たちは、失語症者の描画能力拡大の経過を報告しました。重度の失語症があっても絵の模写ができる患者に出会うことは少なくありません。しかし、描画をコミュニケーション手段として使用できるようになることは難しいことを経験します。今回の事例は、模写はできるが自力では描画をコミュニケーションに使うことはできませんでした。PACEというリハ手法を用いて、自分の描いた絵が相手に何だか伝わる経験を持ってもらうことを丁寧に重ねました。布団の絵を描いて伝わらなかったとき、人の頭を書き加えることによりそれが布団だと伝わることを経験できました。奥さんも絵が描けることに気がつき、紙と鉛筆を用意してくれるようになりました。そうしてようやく彼は自分から上に絵と字を書いて自分の思ったことを妻に伝える場面が出現しました。テレビで旅行番組を見たときは、病前旅行を予定して場所を思い出し、地図と地名を書いて奥さんに見せたそうです。
担当STはCBAを20点と採点しました。他者への配慮ができるなど保たれているところもあるが、できる動作も依存的で自分でやろうとせず、1日テレビを見て過ごすだけの生活になっているなど、中等度の認知機能低下と判断しました。認知機能障害がもっと重症であれば、いくらリハビリテーションを行っても描画を生活で使用できないでしょう、逆に認知機能が良好であったら、他者の援助なしに自力で絵を用いてコミュニケーションに活用できるでしょう。患者の能力を見定め、適切なプログラムを立て、適切に介入することで生活行動を改善していくために、認知機能に着目することの重要さを感じさせられた事例でした。
もちろん、描画に関与するのは全般的認知機能だけではなく、失行の影響、構成能力、イメージ能力、描画の心得などの複合的な要因の影響を考える必要があるでしょう。しかし、患者の残存応力や丁寧なアプローチによって能力を拡大できる可能性の評価が重要です。そして何より伝わる実感、伝わる喜びを沸き起こしていくことが重要です、CBA20点という得点は、自立的、自発的というわけにはいきませんが、誘導により拡大できる可能性を秘めていました。