ご挨拶
CBAを使って高次脳機能障害を評価してみてください
CBA作成者 森田 秋子
高次脳機能障害は、ほんとうにわかりにくいものです。高次脳機能障害について、世の中で語られる機会はずいぶん増えてきましたが、その議論を聞いていると、正しく理解されていないと感じることも少なくありません。
今年度の診療報酬改定で、回復期リハビリテーション病棟の効果判定にFIMアウトカムが導入されました。その中で、高次脳機能障害のある患者さまは、対象から除外してもかまわない、と規定されました。高次脳機能障害がある人は、ADLが改善しないと厚生労働省は考えたのでしょうか。
私は若いころから、「高次脳機能障害があっても、ADLは改善する」ことを経験してきました。もちろん、極めて重度の高次脳機能障害を認め、改善が難しい患者さまもいます。それでも長期的によくなる方にもたくさんお会いします。高次脳機能障害は、一人一人重症度も症状もさまざまです。どのような症状がどのように変化していくか、ADLが改善できる人の高次脳機能障害がどのように変化しいたか。それらの疑問に対して、CBAは私たちに手掛かりを与えてくれます。
脳損傷発症直後の意識障害により反応が乏しい状態、意識が回復しても記憶や見当識障害のため自分の状態を認識できない状態、ある程度わかってきても不確実で深刻みに欠ける状態、概ね正しく理解できる状態…。このような回復に沿った段階をとらえ評価することができれば、それぞれの状態に合わせて適切な関りができ、回復を促進する働きかけを行うことができます。
CBAに興味を持たれた方は、ぜひCBAを使って患者さまを評価してみてください。その方の行動を観察し、その意味を考えながら評価を行うことで、高次脳機能障害の理解が深まっていくことと思います。CBAはメリットもデメリットもありますが、それらを含めて使用してくださった方々と、前向きな意見交換を行い、CBAをより良い評価表に育てていかれることを願っています。
森田秋子
昭和59年 慈誠会徳丸病院入職
平成15年 国際医療福祉大学保健医療学部言語聴覚学科入職
平成21年 医療法人社団輝生会入職
平成26年 医療法人珪山会鵜飼リハビリテーション病院入職、リハビリテーション部長
金井 香
平成16年 国際医療福祉大学保健医療福祉大学言語聴覚学科卒業
同年 伊勢崎福島病院に言語聴覚士として入職